状態方程式入門

状態方程式に基づく制御のYouTube動画

状態方程式(じょうたいほうていしき,State Equation)に基づく制御は、現代制御と呼ばれます。伝達関数に基づいた制御と共に、制御工学における基礎的かつ重要な制御の枠組みになります。制御対象のモデルが常微分方程式や伝達関数で表されるとき、まず、対応する状態方程式に変換します。この状態方程式では、制御対象の内部状態を用いたフィードバックがなされます。状態方程式に基づく制御系の安定性は、行列の固有値と密接に関わってきます。制御器の設計法としては極配置や最適レギュレータなどが挙げられます。制御動画のシミュレーションにはMATLABやPythonなどが用いられています。

状態空間表現

制御対象やシステムを状態空間表現することで、最適レギュレータや極配置など様々な制御手法により制御可能になります。状態方程式は、状態(状態量)と呼ばれる対象内部の変数を用い、入出力システムの特性を表現します。一般的に、出力数・入力数よりも状態数が多いことになります。状態フィードバック制御を施すためには設計論の理解だけでなく以下の可制御性・可観測性・安定性・状態推定に関する知識も必要になります。

状態方程式と伝達関数

伝達関数から状態方程式、状態方程式から伝達関数の相互の変換を行うことができます。制御対象をどの枠組みで制御したいかに応じてどちらのダイナミクス表現を利用するかが決まってきます。ただし、システムの状態空間表現は一意ではなく、状態の選び方に依存しますので注意が必要です。部分分数分解に基づいて対角正準形を導出でき、伝達関数の分子分母の多項式係数に基づいて可制御正準形・可観測正準形が導けます。

状態方程式と線形常微分微分方程式

システムのダイナミクスが微分方程式で与えられる場合、設計のために状態方程式に変換する必要があります。状態空間表現としてシステムを表現することは難しくなく、特に、可制御正準形の形での導出は係数がそのまま状態方程式内に含まれることになり見通しが良い変換が可能です。

状態方程式の可制御性

状態空間表現されたシステムの状態を制御する特性を考える上で可制御性の判定が用いられます。不可制御の場合は、状態フィードバックによって任意に極を配置できなくなります。可制御であれば任意の極配置を実現できます。可制御性グラミアン(可制御性行列)のランク条件を用いることで可制御性を判別します。可制御性に関連するワードとして可安定性があります。

状態方程式の可観測性

状態空間表現されたシステムの状態を推定する特性を考える上で可観測性の判定が用いられます。不可観測の場合は、状態オブザーバによって任意に極を配置できなくなります。可観測であればオブザーバは任意の極配置が可能です。可観測性グラミアン(可観測性行列)のランク条件を用いることで可観測性を判別します。可観測性に関連するワードとして可検出性があります。

システムの安定性

システムの安定性は極により判別することができます。また、リアプノフ(リャプノフ、リヤプノフ)の安定判別法によりリアプノフ関数に基づいた安定判別も可能です。

極配置による状態フィードバック制御

システム極を状態フィードバック制御を施すことで配置します。特にシステムが可制御であれば任意の極を配置することが可能です。極の位置によってどのような応答になるかが変わってきます。

最適レギュレータによる状態フィードバック制御

評価関数の最適化に基づいた制御手法であり、リッカチ(リカッチ,Liccati)方程式を解くことで最適フィードバックを実現できます。LQR(Linear Quadratic Regulator)とも呼ばれます。評価関数内部の重み関数を適切に設定することにより

状態オブザーバ

制御対象の状態量は観測出力数よりも一般に多いため、状態オブザーバによってリアルタイムに状態を推定し、その推定値を使って制御する必要があります。状態オブザーバはソフトセンサ(ソフトウェアセンサ)とも呼ばれます。カルマンフィルタ(オブザーバ以外の使い方として時系列分析もありますが)も離散時間の状態オブザーバとして広く利用されます。

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動画数13:状態方程式,可制御・可観測,極配置,最適レギュレータ,偏差系ほか

動画数4:極配置,最適レギュレータ,サーボ系

動画数23:現代制御理論全般(状態方程式,可制御・可観測,最適レギュレータ等)

動画数6:状態方程式と解の振る舞い

動画数28:現代制御理論全般(状態方程式,可制御・可観測,最適レギュレータ等)

動画数1:カルマンフィルタ

動画数22:現代制御理論全般

動画数:現代制御理論演習

状態方程式と状態フィードバックの図
可観測性の図
可制御性の図
最適レギュレータの図
オブザーバの図

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サイト管理者:岡島寛(熊本大学准教授,専門分野:制御工学)