非線形制御

非線形制御 Vol. 2 モデル予測制御

制御対象が非線形システムの場合や,逆に線形理論で実現できない制御を実現するなど,線形システムとは別の様々な制御アプローチが展開されています。系の安定性にはリアプノフ関数の利用や、非線形システムの制約付き最適化問題ではモデル予測制御など多様な手法が展開されています。動画では、利用例や方法論を交えた説明を展開しています。

Vol. 1 非線形全般

Vol. 2 モデル予測制御

Vol. 3 線形化など

Vol. 4 Vol. 5 Vol. 6 Vol. 7 浅井徹准教授講義

モデル予測制御

ここでは,モデル予測制御(もでるよそくせいぎょ)について説明をします。略してMPC(Model Predictive Control)とも言いますし、RH制御(Receding Horizon制御)とも言います。通常、システムの制御は無限時間(もしくは十分長い時間)に渡って行われることになります。良い制御応答を実現する実用的な手法としてモデル予測制御が利用されます。

モデル予測制御では、評価関数を設定し、その最適化問題を解くことで制御入力を決めます。最初のステップとしては、評価関数を小さくすること(もしくは大きくすること)と性能の良し悪しをうまく関連付ける形で評価関数を設定することになります。例えば、入力信号の二乗や誤差の二乗、誤差の最大値のようなものが評価関数に組み込まれる量の候補になります。また、それらを組み合わせたものを評価関数に組み込むことが一般的です。

評価関数の最適化という意味では、最適レギュレータやカルマンフィルタなども該当しますが、モデル予測制御で扱う対象はもっと広いです。制御対象は非線形性を含んだものでも設定可能であり、評価関数の構造も設定自由度が高いです。また、制約条件も組み込むことができます。この点で汎用性の高い制御手法と言えます。

評価関数の最適化は、通常その解を導出すること自体困難です。しかし、モデル予測制御では”有限の評価区間”での最適化問題を解くため、無限区間の問題を解くよりも実用上解きやすい(適切な解を選択しやすい)です。区間に渡っての制御入力を定めることから、評価区間が長くなると(感覚的には)線形的ではなく指数関数的に入力信号の組み合わせパターンが増えていきます。長くない区間での最適化問題であれば多少の問題としての難しさがあったとしても良好な解を得ることができます。

モデル予測制御では、各(離散)時刻ごとに最適化問題を解いて、その解のうち現在時刻のもののみ制御入力として利用し、次の時刻以降の解軌道は捨てます。次の時刻以降でも最適化問題を解いて入力解を得ることを前提としています。ずっと最適化問題を解き続けることで、制御入力を求めていくことになります。

この手法では、評価区間は短いほど解を求めやすく、長いほど大域的解に近い挙動の入力が得られる(ある種の)トレードオフがあります。評価区間は一定以上長ければ十分です、しかし、その一定値は制御対象の特性に依存します。評価区間を短くしすぎると逐次最適解を使い続けてるにも関わらず応答性能が悪くなり得て下手したら不安定化します。

制約付き最適化、非線形といった難点を有限区間問題に帰着させて逐次的に解くことで解決しており適用範囲はかなり広いです。適用範囲や仮定の理解が正しい使い方につながり、正しい使い方ができればかなり有効な制御手法であるというのがモデル予測制御に関する認識です。

最適化に基づく実用的な制御手法~モデル予測制御,MPC,RH制御~|note 

モデル予測制御 part 1

YouTube (MATLAB Japan)  

モデル予測制御 part 2

YouTube (MATLAB Japan)  

非線形制御の図
非線形制御の図2

その他制御理論


動画19本:(制御理論の基礎,制御系設計)

動画6本:(相対次数,可制御・可観測)

動画10本:(リアプノフ方程式,L2誘導ノルム,不確かさ表現)

動画17本:(線形行列不等式概要,リアプノフ不等式の解,シュールの補題,リカッチ方程式,設計シミュレーションほか)

動画4本:(システムの離散化,極と安定性)

動画12本:(2自由度制御,外乱オブザーバ,内部モデル原理ほか)

動画4本

(観測信号からの状態推定)

動画7本:(モデリング、システム同定)

動画21本

動画6本:(講演の動画)

解説記事へのリンク

解説記事リンク集